ミサキは、焦った表情でマサトに問い返した。
「は? え……? 倉庫って? ど、どこ……の?」
「陸部……の……」
マサトの言葉に、ミサキの顔から血の気が引いていく。その瞳は大きく見開かれ、唇が震えていた。
「え……!? み、見ちゃったの……!?」
力が抜けたように肩を落とし、ミサキは愕然とした表情で聞いてきた。その声は、震えていてか細い。
「ミサキを待つのに陸部の倉庫の中で、スマホは持ち込みが禁止されてるから隠れてゲームして待ってたら、先輩とミサキが入ってきた……」
「……そ、そっか……見られてたのか……最悪! ……わたしの人生……終わった……!! で……なに……?」
ミサキは目を逸らし、マサトから距離を取るようにベッドの上で少しずつ後退した。顔色は、マサトよりも悪いんじゃないかと思うほど青ざめている。
「先輩と付き合ってるのか?」
これが、今、マサトが絶対に知りたい情報だった。もし付き合っていたのなら、俺が口出しする余地はない。話は、そこで終了だ。そして、もうミサキとは二度と会いたくない。いや、会えない。
明日からの迎えも、もう断ろう。そう心に決め、マサトはミサキの返事を待った。
ミサキは俯いたままだったが、強い口調で言った。
「……付き合ってるわけ無いじゃん!!」
付き合っていないのは、先輩に「好きな人がいる」とハッキリ言っていたから分かっていた。マサトは、ただ確認のために聞いたのだ。
「付き合ってなくてエッチしてるのか?」
これも重要な情報だった。もし付き合っていなくても、ミサキが好きでエッチを許しているのかもしれない。あるいは、セックスフレンドという可能性もある。
「見てたなら分かるでしょ……無理やりだって……」
ミサキはそう言って、涙声になった。その言葉に、マサトは思わず反論してしまう。
「でも、ミサキが抵抗しないっておかしいだろ?」
その言葉は、マサト自身にも向けられていた。ミサキは、さらに声を震わせる。
「初めは抵抗してたし……力で勝てるわけ無いじゃん。それに、妹の好きな人のお兄ちゃんだし……騒ぎにしたくなくて……」
ミサキの言葉に、マサトは混乱した。
「だったら、騒ぎにしなくても行かなければ良かったんじゃないの?」
「……その……昨日さ……スマホで写真を撮られちゃってさ……来なきゃ皆に送るって言われて、仕方なくって感じかな……はぁ……」
ミサキの顔から、再び血の気が引いていく。その瞳には、絶望と恐怖の色が浮かんでいた。マサトは、静かに、そして改めて尋ねた。
「ミサキは嫌なんだな?」
ミサキは、顔を上げ、マサトの目を真っ直ぐに見つめた。涙が、その瞳から溢れ出している。
「当たり前じゃん……嫌だよ、最悪だし……」
こんな状況だけど……。
ミサキも「好きな人」って言ってくれてた。もしかしたら、こんな状況だからこそ、正直に言えたのかもしれない。普段の元気なミサキなら、照れて絶対に言えなかっただろう。
もちろん、他の男とエッチしているところを見てしまって、ショックは大きい。でも、それはミサキの意思じゃなかった。俺のことを好きだと思ってくれているなら、俺はミサキと付き合いたい。詳しい話は、落ち着いてから後で聞けばいい。
「なぁ〜俺と付き合わないか?」
マサトの言葉に、ミサキは驚いたように顔を上げた。その瞳には、まだ涙が浮かんでいる。
「は? 何いってんの? 他の男とエッチしたんだよ? これからもされるかもしれないし……」
ミサキはそう言って、再び顔を俯かせた。
「で……俺のことは嫌か? 付き合いたくないか?」
マサトは、ミサキの返事を待った。少しの沈黙の後、ミサキは震える声で答える。
「……付き合いたい……! ずっと好きだったし……マサトが良ければお願い……したい。」
やった!ミサキと付き合える!マサトは、嬉しさで胸がいっぱいになった。
「よし。じゃあ明日、二人で先輩に会いに行くか!」
マサトは立ち上がり、ミサキの手を掴もうとした。しかし、ミサキはハッとしたように顔を上げ、マサトの手を振り払う。
「は? マサト弱いし……マサトが来たらボコボコにされるって……」
ミサキは俯き、暗い表情でマサトの方を心配そうに見つめてきた。その瞳は、恐怖に揺れているようだった。
ミサキの言葉に、マサトは不安を打ち消すように、明るく振る舞った。
「ん〜、たぶん……大丈夫じゃない? 俺、秘策あるし……」
「え? なに? どんな?」
「秘策」という言葉に反応し、ミサキの顔色がみるみるうちに元に戻った。嬉しそうな表情でマサトにじりじりと近づいてくる。肩が触れ合いそうな距離まで近づくと、ミサキはキラキラした瞳でマサトを見つめた。
「後で話すよ。それより……今日は、泊まってくか?」
マサトは、まだ色々聞きたいこともあったし、せっかく付き合えることになったのだから、ミサキと一緒にいたいと思った。
「は? う、うん。……別に良いけど……お泊りセット持ってきてないよ?」
「そのお泊りセット、うちに置きっ放しだぞ」
「へ? あぁ……去年に泊まりに来た時のやつか〜。ここにあったのか!」
ミサキは驚いたように目を丸くしている。その様子を見て、マサトの心にまた疑念が湧き上がってきた。
「へぇ〜……ミサキ、そんなに泊まり歩いてるんだ……? 先輩の他にも、そんな関係の人がいるのか?」
「ばかぁ……いるわけ無いでしょ……女の子の家だってのっ」
ミサキは頬を赤く染め、ぷんぷんと怒ったように言った。その言葉に、マサトは少しだけ安堵した。
「そっか、安心した……」
マサトの言葉を聞いて、ミサキはホッとしたように微笑み、ベッドに横になった。
ミサキが横になったのを見て、マサトは冷静になるように自分に言い聞かせた。
「な〜泊まるなら親に連絡しないとだろ? 心配するぞ〜」
マサトがそう言うと、ミサキはベッドから体を起こし、悪戯っぽい笑顔を見せた。
「マサトのスマホ貸して〜。マサトといるってわかると、ママが安心するし。一番確実だよっ」
ミサキの母親のスマホには、俺のスマホの番号もLINEも登録されている。小学校の頃、スマホを手に入れたばかりで浮かれていた俺が、ミサキの家に遊びに行った時に、彼女の母親に色々と登録されてしまったのだ。
は? 逆に不安になるだろ!?
俺、男なんだけど? どうして娘が男の家に泊まるのに安心するんだよ? 普通、許可するにしても色々と確認したくなるだろ……。うちの親に確認したり、面倒になると思うんだけど? ミサキさん? マサトはミサキの言葉に、呆然としながらも、どうすればいいか分からず立ち尽くした。
マサトは、信じられない気持ちでミサキに尋ねた。
「え? 逆に不安になるんじゃないのか? 俺の家に泊まるって、俺のスマホの番号で俺ってバレるし」
ミサキは、そんなマサトの戸惑いなど気にせず、当然のように答えた。
「ん〜……マサトは、うちの両親に信用あるし大丈夫だよ? 去年も泊まってるしさ〜」
その言葉に、マサトは慌てて反論した。
「去年って……他にも友達が大勢で泊まって、ミサキは客室で寝てただろ」
しかし、ミサキは聞く耳を持たない。
「大丈夫だってっ! 何も言われないと思うけど? まあ、もしなにか言われたら、マサトと付き合うことになって結婚するって言うし」
その言葉に、マサトは呆れてしまった。
「は? 付き合う結婚するは別に言っても良いけど……そのつもりだし、それで納得するわけないだろ」
ミサキは自信満々に微笑んだ。
「納得すると思うよ……うちでマサトは人気あるし。ママがよく『マサトくんと結婚ができたら良いのにね〜』って言ってるくらいだし」
「……そうなんだ……じゃあ、ミサキに任せる。俺は詳しく分からないし」
マサトは、戸惑いながらもミサキにスマホを渡した。ミサキは慣れた手つきで母親に連絡し、あっさりと許可が取れた。
「良いって〜! やった! えへへ……♪」
ミサキは嬉しそうに飛び跳ね、マサトのスマホを返してきた。マサトは、その信じられない展開に、ただ立ち尽くすことしかできなかった。
ミサキはドヤ顔でマサトを見てきた。しかし、その表情はすぐに曇り、俯くようにして言った。
「ねぇ〜、お風呂入りたい……体が気持ち悪い……早く洗い流したいんだけど……体が気持ち悪くて……」
あ、そっか……。マサトは、あの倉庫での出来事を思い出し、胸が締め付けられるような痛みを感じた。そりゃそうだよな。あんなことがあった後だ。
「すぐに用意してくるわ。もうちょい待ってて」
マサトはそう言って、急いで風呂の準備を始めた。
「は〜い♪ ありがとね〜」
ミサキの明るい声が聞こえる。マサトは風呂の準備を終えて部屋に戻ると、ミサキのお泊りセットが入ったバッグを渡した。ミサキは中身を確認し始める。去年のものだから、サイズは大丈夫だと思う。もしダメでも、俺のTシャツやジャージもあるしな……。
あ、下着は……どうしよ……?
マサトは焦った。下着だけはさすがに貸せない。買いに行けばいいのか? でも、俺のお小遣いで買えるかな……高いのかな……?
「うわぁ〜懐かしい……可愛いパジャマ……うわっ! パンツも可愛い……ほら〜見てみて〜」
ミサキは、そう言って、可愛らしい柄の少し幼さを感じる綿のパンツをマサトに見せてきた。
可愛いとは思うけど、なんて反応すれば良いんだよ……。
マサトは、戸惑いと苛立ちを感じながら、どうしていいか分からず、ただミサキを見つめることしかできなかった。
ミサキが風呂に入りに行き、マサトは一人ベッドの上でゲームをしていた。しばらくして、扉が開き、ミサキが部屋に入ってきた。去年のものだという、可愛らしいパジャマに身を包んでいる。
「どう? 可愛いでしょ〜? 最近はTシャツにハーフパンツだから、久しぶりのパジャマ嬉しいかなぁ♪」
ミサキはくるりと一回転し、マサトにその姿を見せる。そのパジャマからは、洗剤の優しい香りに混じって、確かに俺の家の匂いがした。
「それに、このパジャマ、マサトの家の匂いがする〜。良い匂いっ♪ 洗ってくれてあるんだ?うれし〜」
嬉しそうにはしゃぐミサキに、マサトは少し照れながら言った。
「多分、俺の母親だろ〜」
「ママに感謝だねっ。今日は落ち着いて寝れる♪」
そう言って、ミサキはマサトの隣に腰掛けた。
「ねぇ〜、可愛いだろ〜? なぁー♪ 返事まだ聞いてないぞ〜? ねぇ〜ってばぁ〜」
ミサキは、マサトの腕を小突いて、返事を催促する。マサトは、戸惑いながらも、その可愛らしい姿に、少しだけ心が揺れるのを感じた。
俯いて涙を流すミサキを、先輩は何もなかったかのようにその場に置いて帰っていってしまった。ミサキは一人、地面に座り込んだまま嗚咽を漏らす。雨が降り始めたのか、冷たい雫がミサキの頬を叩き、地面に染みを作っていく。「ううぅ……なんで、こうなっちゃったの? わたしが何をしたの?」 別に、先輩に優しくしてほしいわけじゃない。好きでもないし、むしろ嫌いで顔も見たくない。ただもう、解放してほしいだけなのに。放っておいてほしいだけなのに。「はぁ……何が原因だったんだろ……?」 そういえば、マサトがよく言っていたことを思い出す。『お前は、そんな男っぽい性格で振る舞ってるけど、見た目は可愛いんだから気を付けろよ』と。 ミサキはその言葉を無視し、更衣室が混んでいるからと、体操服を着たままバッグと制服を抱えて空き教室を探し回っていた。これから着替えるのがバレバレだっただろう。着替えるなら、人が来ない場所に行くのもバレバレだ。それで、人が来ない空き教室に入った自分が悪かったのだろうか。わたしの着替えなんて見たい人いない、そう思っていた自分が、本当に馬鹿だった。ミサキは、雨に濡れながら、後悔の念に囚われていた。 様々な考えが頭を巡り、落ち込みながらもなんとか立ち上がろうと腰を上げた。その瞬間、ミサキの股からドロッとしたものが溢れ出てくるのが見える。それは、先輩から何度も中で出された大量の精子だった。太ももにもつーっと伝って垂れてくる。その光景を見ているだけで、ミサキは心が拒絶しているのか、ひどい吐き気を感じた。 ミサキは、先輩によってぐちゃぐちゃに汚されたアソコを、かろうじてティッシュで拭き、身なりを整えてベンチに座った。ぼんやりと空を見上げていると、マサトがミサキを探し回ってくれていたらしい。「おい。ここで先輩と待ち合わせなのか?」 マサトの問いに、ミサキは咄嗟に言葉を否定する。「ち、違うってばっ。散歩してて休んでるだけ……」「そうなのか? 随分と、ぐったりしてるし……大丈夫なのか?」「うん……ちょっと歩きすぎたのかも……べつに大丈夫だよっ」 マサトと話していると、ミサキの心に罪悪感が押し寄せてくる。彼の顔をまともに見ることができない。嘘をついている自分が、本当につらかった。「先輩と公園で約束してただろ? どこの公園なんだ? これから行くつもりなのか?」 マ
「嫌だって言う割には、触る前から濡れてるぞ? で、昨日は好きな人に入れてもらったのか? 俺が出した穴で……?」「関係ないでしょ……」「へぇ〜。その反応だと入れたんだな……。俺がたっぷり出した穴で、気持ち良いって彼氏に言ってもらえたか?んで……これからまた、たっぷり出された後で、彼氏に使用済みの穴で、彼氏がソレを入れて、俺の精子で擦られて気持ち良いって言って、また同じ穴で出されるのか?あはは……彼氏は何も知らずに最高だな……毎回俺の後だって知らずによ。んで、知らずに俺の精子が入ってるのも知らずに、舐めて濡れてるって勘違いして興奮して喜んでるんじゃね? お前の俺の精子を舐めて美味しいってよ。最高だな」 ミサキは最低で酷い言葉を投げつけられているのに、アソコがくちゅくちゅと音を立てるほど濡れていくのを感じていた。先輩に触られると、すぐに気持ちよくなってしまう。わたしも最低だね……。こうなること、本当は分かっていたのに、マサトと付き合うと言って喜んでしまった。先輩のアレを舐めた後でキスもしたし、口の中で出された後にも舌を絡ませたりした。そんな自分は、本当に最低だ。「そんなことないっ! いや……やめてっ! もう、彼氏と以外はしないっ!」 ミサキの言葉に、先輩は楽しそうに笑いながら言った。「そんなことを言ってても、初めての時もそんなことを言ってても、毎日、俺の所に通ってるじゃん」 違う。脅されて、仕方なく来ているだけだ。今は、マサトと付き合って、彼女になったんだ。マサトの彼女なのっ! ミサキはそう心の中で叫び、マサトの元に帰らなければと強く思った。彼の腕の中に帰りたい。彼の優しさに包まれたい。先輩の冷たくて、下卑た笑みから逃げ出したかった。「こんだけ濡れてれば、もう入るだろ……。それにしても、毛も生えてない小さな子供みたいな割れ目なのに、少し触っただけなのによ……こんなにドロドロでグチャグチャに濡らして、エロい汁が垂れてるぞ?挿れて欲しくてお前の穴がヒクッヒクッておねだりしてるし、もう入れるぞっ。早く尻をこっちに向けて出せよ」 先輩に酷い言葉を投げつけられ、触られているうちに、ミサキはまた抵抗することができなくなった。されるがままの状態で、何も言い返すことができない。マサト、助けて。マサトの彼女なのに……。 昨日のマサトに触られている時よりも、先輩に触られて
こんな出来事を、マサトに話せるわけがない。先輩との行為を見られても、まだミサキのことを好きだと言ってくれる。付き合ってほしいと、あんなにも優しい瞳で言ってくれたのに。先輩との時間が気持ちよかったなんて、絶対に知られたくない。毎日のように犯され、快楽に溺れてしまったことも、マサトには知られたくない。 今でさえ、ミサキが先輩に犯されているのを見て、ショックのあまりマサトのソレは萎えてしまっている。先輩が話を盛って嘘を言っていると、ミサキが必死に嘘を言っても、マサトのソレは大きくならない。このまま真実をマサトに知られてしまったら、きっとすべてが終わってしまう気がする。マサトとの関係も、マサトへの想いも。それは絶対に嫌だ、とミサキは心の中で叫んだ。「マサト……これから、どうするの?」「え? なにが?」「先輩……なにか秘策があるって言ってたけど、何をするの?」「あぁ、あのエッチをしてる動画をバラ撒くって脅せば、あいつも引き下がるだろ?無理やりエッチをさせてるわけだし」 それは、まずい。先輩も動画を撮っていた。それに、ミサキ自身が「気持ち良い」とか「我慢できない……入れて」と懇願している動画も撮られている。もしマサトが先輩に動画を見せたら、反撃されるだけで終わってしまう。そんなことをすれば、きっとマサトはミサキに幻滅するだろう。そんなの耐えられない。「そ、そうなんだ……上手くいくといいな……」「ミサキ、顔色悪いぞ?やっぱり今日、初めて……無理やりエッチされて、具合が悪くなっちゃったんじゃないか?」 ミサキは俯いて、小さく首を横に振った。ごめん、マサト。初めては、とっくの昔に奪われちゃっているんだよ……。マサトの言葉が、ミサキの心に重くのしかかった。「あ、そうかも……少し休んでるから、お風呂入ってきちゃえば?」「あ……そうだな、ちょっと待っててな」 マサトがお風呂に入っている間に、ミサキはマサトのスマホから動画を消去してしまった。自分と先輩がエッチをしている動画をマサトが持っているのも嫌だったし、もしマサトが先輩に見せに行って、先輩のスマホにある動画を見せられたら最悪だ。そんなことになれば、マサトとの関係は完全に終わってしまうだろう。ごめん……マサト……。 やがて、マサトがお風呂から上がり、部屋に戻ってきた。「具合はどうだ?」「あ、うん。少し良く
ミサキ視点 マサトの腕の中にいる。ミサキは、その温かさと優しい匂いに包まれながら、本当は嬉しくて仕方がなかった。彼の大きな手が、背中にそっと回される。その手のひらから伝わる熱が、ミサキの心の奥底に染み渡っていくようだった。こんな自分を、マサトは心配してくれている。そして、信じてくれようとしている。それどころか、「付き合わないか?」とまで言ってくれた。 小学校の低学年の頃から、ずっとマサトのことが気になっていた。いつも隣にいて、一緒に遊んでくれて、優しいマサト。その笑顔を見るたびに胸がキュンと音を立てるような、淡い恋心をずっと抱いていた。だから、本当は「うん」と頷いて、彼の腕の中で安堵の涙を流したかった。心から付き合いたいと願っていた。 あれは、ほんの数ヶ月前のことだ。陸上部の練習が終わり、更衣室が混んでいたので、ミサキは人目につかないようにと、空き教室の片隅で着替えをしていた。体育着を脱ぎ、下着姿になったその時、教室の扉がギーッと音を立てて開いた。そこに立っていたのは、部活の先輩だった。「お前、こんな所で着替えてんのか? 誘ってんだろ……それ」 先輩は、獲物を見つけたかのようにニヤニヤと下卑た笑みを浮かべ、ミサキの方へゆっくりと近づいてきた。その足音は、ミサキの鼓動に合わせてかのように、ドクドクと不気味に響く。「きゃっ! 着替えてるんで、出ていってください!」 ミサキは慌てて両手で胸とパンツを隠し、後ずさりする。背中が冷たい壁にぶつかり、もう逃げ場はなかった。ミサキの下着姿を、先輩は楽しむようにスマホのカメラで数枚、写真を撮っていた。フラッシュの光がミサキの目に焼き付く。「撮らないでください!イヤっ!」 絞り出した悲鳴は、むなしく空き教室に響くだけだった。着替える場所を人目に付かない場所にしたのは、自分自身だった。その自分の選択が、今の状況を招いてしまった。後悔と恐怖が、ミサキの心に重くのしかかる。壁に背中を押しつけられたまま、ミサキはただ震えることしかできなかった。 写真を撮られたことにミサキの思考は完全に停止していた。頭の中は真っ白で、何が起きているのかを理解するまでに時間がかかった。「え? 何で……先輩が……? わたし、どうなるの……?」 混乱するミサキの心とは裏腹に、先輩の行動は素早かった。考える間もなく、腕を掴まれ、背後から抱きし
マサトは、恥ずかしさからか、素直に「可愛い」とは言えなかった。代わりに、口から出たのは別の言葉だった。「似合ってる……」 ミサキは、その言葉に満足したように「えへへ……♪」と嬉しそうに微笑んだ。「ご機嫌だな?」「それは……マサトに告られて、付き合えることになったからねぇ〜。それに今日、お泊まりだよ?嬉しくないわけないだろっ」 ミサキの言葉に、マサトはさっきまでのことを思い出す。そういえば、ミサキがうちに泊まることになったんだっけ。「あ、そうだ! 客室で寝るだろ? 用意してくるか〜」 マサトは、慌ててベッドから立ち上がろうとした。しかし、ミサキがその手を掴む。「は? 付き合ってるんだから一緒に寝よう……? あ、さっき先輩とエッチしちゃってるからイヤだよね…………はぁ……」 ミサキの言葉に、マサトは再び思考が停止した。 ん? 俺とエッチしてもいいってこと? それとも、自分の体が汚いって思ってる?どちらにせよ、ミサキの言葉はマサトの心を大きく揺さぶった。 ミサキの言葉に、マサトは焦った。「いや、付き合ってても、まだ中学一年だし……」「ふぅ〜ん……わたしに興味がないんだ?」 ミサキは、そう言ってマサトの胸に顔を埋めた。「あるけど……」「けど……汚いって思ってるよねぇ……。ホントなら、マサトに初めてを捧げようって思ってたんだけどなぁ……最悪だよ……」 その言葉は、マサトの心に突き刺さった。ミサキは、本当に辛いんだ。「そう思ってくれてるだけで、十分嬉しいって」 マサトは、震える声でそう答えた。しかし、ミサキの言葉は止まらない。「じゃあ……キスしよ? ねぇ〜、口も洗ってきたし、キレイだよ。アソコもできるだけキレイにしてきたし……まあ……良かったらだけど……な~」「え?」 マサトが戸惑っていると、ミサキはさらに続けた。「だって……どうせなら、好きな人とエッチして、幸せな気分でいたいじゃん……。自分でも汚いって思っちゃうしさ……。マサトで上書きして欲しい……ダメかぁー? いや?」 ミサキは、マサトの返事を待たずに、そのまま抱きしめてきた。そのまま、二人はベッドに倒れ込む。ミサキは、マサトの唇に自分の唇を重ね、舌を入れてきた。マサトの舌に、ミサキの舌が絡みつく。ゾクゾクと、背筋に電流が走った。 しかし、その瞬間、さっきの倉庫での光景
ミサキは、焦った表情でマサトに問い返した。「は? え……? 倉庫って? ど、どこ……の?」「陸部……の……」 マサトの言葉に、ミサキの顔から血の気が引いていく。その瞳は大きく見開かれ、唇が震えていた。「え……!? み、見ちゃったの……!?」 力が抜けたように肩を落とし、ミサキは愕然とした表情で聞いてきた。その声は、震えていてか細い。「ミサキを待つのに陸部の倉庫の中で、スマホは持ち込みが禁止されてるから隠れてゲームして待ってたら、先輩とミサキが入ってきた……」「……そ、そっか……見られてたのか……最悪! ……わたしの人生……終わった……!! で……なに……?」 ミサキは目を逸らし、マサトから距離を取るようにベッドの上で少しずつ後退した。顔色は、マサトよりも悪いんじゃないかと思うほど青ざめている。「先輩と付き合ってるのか?」 これが、今、マサトが絶対に知りたい情報だった。もし付き合っていたのなら、俺が口出しする余地はない。話は、そこで終了だ。そして、もうミサキとは二度と会いたくない。いや、会えない。 明日からの迎えも、もう断ろう。そう心に決め、マサトはミサキの返事を待った。 ミサキは俯いたままだったが、強い口調で言った。「……付き合ってるわけ無いじゃん!!」 付き合っていないのは、先輩に「好きな人がいる」とハッキリ言っていたから分かっていた。マサトは、ただ確認のために聞いたのだ。「付き合ってなくてエッチしてるのか?」 これも重要な情報だった。もし付き合っていなくても、ミサキが好きでエッチを許しているのかもしれない。あるいは、セックスフレンドという可能性もある。「見てたなら分かるでしょ……無理やりだって……」 ミサキはそう言って、涙声になった。その言葉に、マサトは思わず反論してしまう。「でも、ミサキが抵抗しないっておかしいだろ?」 その言葉は、マサト自身にも向けられていた。ミサキは、さらに声を震わせる。「初めは抵抗してたし……力で勝てるわけ無いじゃん。それに、妹の好きな人のお兄ちゃんだし……騒ぎにしたくなくて……」 ミサキの言葉に、マサトは混乱した。「だったら、騒ぎにしなくても行かなければ良かったんじゃないの?」「……その……昨日さ……スマホで写真を撮られちゃってさ……来なきゃ皆に送るって言われて、仕方なくって感じかな…